グライダー墜落死 明妻さん、事故直前に「降りたい」

 埼玉県熊谷市で10日に開催されていた関東学生グライダー競技会で、飛行中の1人乗りグライダーが大泉町古海(こかい)の利根川河川敷に墜落、操縦していた早稲田大学4年、明妻(あけづま)祐也さん(22)が死亡した事故。国土交通省は11日、運輸安全委員会の航空事故調査官2人を現地に派遣、検証を行い、機体の故障は見られず損傷箇所は「墜落によるもの」とした。一方、日本学生航空連盟関係者によると墜落直前、明妻さんから「降りたい」との連絡があったという。

 調査官2人は11日午前11時、グライダーが離陸した埼玉県熊谷市の日本学生航空連盟妻沼滑空場内にある同連盟事務局で職員らの説明を受けた後、大泉町古海の墜落現場で機体状況の確認などを行った。調査後、詳しい事故原因について、関係者や目撃者への聞き取り調査を実施した後、「できるだけ早く報告書を作成したい」とした。

 堤康博調査官によると、機体は機首から地面にめり込むような形で墜落した。「コックピット内部の構造物も壊れていた」という。墜落によってできた穴の深さは「約30センチから40センチ」。墜落の衝撃により、左の主翼にひびが入り、右の主翼は中間部分で折れていた。

 右翼が大きく損傷していることから、右翼から墜落した可能性について「確かに損傷程度は大きく、地面にあたった形跡もある」とした。機体後部、尾翼付近の細くなった胴体部も2つに折れていたという。意図した着陸か否かの判断基準となる車輪は機体下部に内蔵され「(機体内部に)引っ込んでいた」とし、損傷程度から墜落によって「構造的に壊れているのではないか」との見方を示した。飛行以前にできたとみられる不備は確認できず、損傷は「墜落によってできた」と述べた。10日の競技会でグライダーは妻沼滑空場を離陸後、東に飛び、千代田町の工業団地上空から太田市高林の工業用給水塔上空の2つのチェックポイントを回り、滑空場に戻る24キロコースのタイムを競った。日本学生航空連盟によると、墜落したグライダーはいずれのチェックポイントも通過できておらず、滑空場に戻る途中だったとみられる。

 墜落した機は早稲田大学の所有。機体整備について日本学生航空連盟理事で安全・教育訓練担当の日高光信さんは「毎日、飛行前に行っており、1年に1回は対空検査を実施し、事故当日も問題なく3回飛んでいた」。明妻さんの健康状態については「試合前の3日前から問診、健康診断を行っており問題はなかった」とした。

 また、墜落直前、明妻さんから「ピスト」と呼ばれる無線で「降りたい」という連絡があったという。無線の受信係は学生主体の運営委員会が担当していた。

 競技会には、関東の大学10校から18チーム、56人が参加。競技は10日から16日までの予定だったが、事故を受けて中止となった。

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