生前退位

GHQも退位を認めなかった… 「野心的な天皇が退位して首相になっては困る」 政府「天皇に私なし。すべては公事」

 先の大戦に敗北した日本は占領下に置かれ、連合国軍総司令部(GHQ)に「象徴天皇制」を含む新憲法を突きつけられた。

 GHQは皇室制度の存続だけは認めたものの、天皇の神格化を排除するため、大日本帝国憲法(旧憲法)第1条の「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」を放棄させ、新憲法第1条で「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と規定した。

 さらに第2条で「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」と定め、大日本帝国憲法と同格だった皇室典範を一般法に格下げした。

 GHQは他にも天皇の権威を失わせる施策を次々と推し進めたが、天皇の譲位(生前退位)には慎重だった。

 昭和21年8月30日、民政局のサイラス・ピークは、内閣法制局第一部長の井手成三を呼び出し、生前退位をめぐり次のようなやり取りをした。

 ピーク「天皇ノ退位ヲ認メヌ理由」

 井手「上皇制度ナド歴史的ニモ弊害アリ寧(むし)ロ摂政制度ノ活用ヲ可トス」

 ピーク「昔ハ退位ハアツタカ」

 井手「然リ」

 ピーク「退位ヲ認メルト今上陛下ニ影響スルコトヲオソレタカ」

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