「今回の作品では『恐怖』の原点に帰った」とプロデューサーの川田将央氏は胸を張る。主人公は過去のシリーズに登場した警察出身の「レオン」や「クリス」といった屈強な男性ではなく、特殊な能力を持たない女性。長年のファンが持っている「親しみ」を、恐怖のためにあえて排除したという。
恐怖と解放の波
バイオハザードでは何を「恐怖」と感じるかを追求し続けてきた。
第1作ではゾンビに向けて銃を撃った後、薬莢(やっきょう)が床に落ちる音までを再現した。倒した敵は画面から姿を消すというそれまでのゲームの常識を排し、あえて姿を残して「再び起き上がってくるのでは」との恐怖感をプレーヤーに与えた。
さらに、ただ逃げるだけではなく、途中で銃やナイフなどさまざまな武器を手に入れて敵と戦うのも大事なポイントだ。マシンガンを手に入れたときの安心感は大きい。「最初は恐怖に陥るが、戦える力を蓄え、敵を倒すカタルシス(解放感)までが味わえる」(川田さん)。
しかし、安心した直後にまた、恐怖に陥る展開が仕込まれている。「この一連の波を作ることが大事なんです」と川田さんは力説する。波に翻弄されながら、プレーヤーはゲームにのめり込んでいくのだという。
国ごとに色分け
作品は海外でも人気が高い。特に北米は「ジョーズ」などホラー・パニック映画を育ててきた中心地でもあり「重要な市場だ」とカプコンの辻本春弘社長は強調する。市場調査や販売促進を重ね「子供だけでなく、大人も楽しめる内容にすることに挑戦してきた」という。
苦心したのは、ナイフや銃でゾンビと戦う場面での描写だ。恐怖を追求する上でリアルな残酷さは欠かせないが、あまりに暴力的な表現は規制を受ける。
過去の作品のドイツ版では、ゾンビが流す血は緑色にした。当時、同国では流血を赤色で表現することは規制されていたためだ。