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細胞が自分自身を食べて生き延びる自食作用「オートファジー」の仕組みを解明し、2016年のノーベル医学・生理学賞に輝いた東京工業大栄誉教授の大隅良典さん(71)。「誰もやっていないこと」をやりたいとの思いから、細胞に隠されていた未知の生命現象を明らかにした。その研究人生を振り返る。(伊藤壽一郎、草下健夫)
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大隅さんは1945年2月、福岡市で生まれた。兄と2人の姉がいる末っ子。父の芳雄さんは九州大工学部の教授で、祖父の長沼賢海さんは九大名誉教授の日本史学者。12歳年上の兄、和雄さんも大学で中世思想史を専攻し、後に東京女子大教授を務めた。
学者一家の環境で、研究者になって当然の雰囲気だった。進路を理系に決めたのは、東京大に通っていた和雄さんが帰省するたびに科学の本をプレゼントしてくれたことが、大きく影響した。
和雄さんが文系に進んだだけに、父親が1人ぐらいは理系に進んでほしいと期待していることを「折に触れて感じていたこともあった」と話す。
だが、父がいる九大にはどうしても行く気になれず、東京大の理科2類へ進学。できたばかりの教養学部基礎科学科で、科学の全分野を学んだ。「新設学科はやる気にあふれた雰囲気で、実に楽しかった」と振り返る。