中国機の領空接近に対する航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)は4〜6月の統計で過去最多の199回を記録した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)にも忍び寄り、防衛白書は尖閣に向けた「南下」の動きを新たに指摘。部隊はそうした飛行に日夜目を光らせる。
領空接近の回数の増加に加え、自衛隊機への異常接近など「何をしてくるか分からない不気味さもある」と隊司令の横尾広1等空佐(49)は話す。レーダーに映る無数の影から警戒すべき航空機を見抜き、空自機に緊急発進を命じるか瞬時の判断を迫られる。
発見・識別・迎撃という領空侵犯を防ぐ対処の中でミスは許されず、部隊には緊張感がみなぎる。慣れと油断は禁物で、基本に忠実であることを徹底する。
傘下に持つレーダーサイトは離島や僻(へき)地(ち)にあり、隊員には生活の不便さが伴うことも多いが、先輩隊員は任務のやりがいを伝え、家族ぐるみの包容力で若い隊員を支える。離島や僻地だからこそ、ひとたび災害が起きれば住民を救う貴重な戦力にもなる。
部隊が国民の目に触れることは少ないものの、運用の中枢でもある。航空機やミサイル部隊に指示を出し、担当空域全体の作戦を統制するからだ。
ただし、そこでも最も重要なのはやはり敵機の発見で、見逃せば作戦は成り立たない。
発見を担うのは幹部ではなく、警戒管制員と呼ばれる曹士。「領空を守る目である彼らこそ受章の代表」(横尾隊司令)だ。(半沢尚久)