飲食店や病院などにある小さなラブラドールの乗った箱に見覚えがある方はいるだろう。盲導犬育成のための募金箱だ。どのように盲導犬が育成されているのか、を知りたくて、盲導犬のトータルライフケア施設「富士ハーネス」を訪ねた。富士山を望む広々とした緑あふれる敷地で、犬の繁殖から引退犬の世話まで網羅する。常時見学ができる情報発信基地だ。
ここで生まれた盲導犬候補の子犬は、パピーウォーカーという飼い主のもとで人間への信頼感が築かれた後、「富士ハーネス」で本格的な訓練が始まる。訓練を経て盲導犬になれるのは盲導犬の適性や健康状態をクリアした全体の3、4割だという。
「富士ハーネス」で行われる盲導犬デモンストレーションを体験してみた。アイマスクを着けて犬に誘導してもらうと意外なほど犬の歩みが早く感じる。犬が早いのではなく、私の足がすくんでヨチヨチとしか歩けないからだ。見えない怖さを体感し、目の代わりとなってくれる盲導犬のありがたみを実感した。
盲導犬ユーザーの方にもお話を伺った。「盲導犬を貸与してもらうまでは、家族の誘導なしでは移動できず、白杖(はくじょう)だと決まったコースしか歩けない。盲導犬のおかげで旅行にも行ける、行動範囲が広がった」とおっしゃった。