国境を流れるアムール川(黒竜江)をはさんだブラゴベシチェンスクと黒竜江省黒河は、両地域の発展の差を象徴するような光景だ。人口約20万人の地方都市の対岸には、近代的な高層ビルが立ち並ぶ人口約200万人の大都市が向き合う。
ABCの記事は「メキシコが過剰な人口を米国にはき出すように、ロシア極東は中国の人口安全弁のようになってきている」と指摘した。ただし流入を防ぐために「壁」を築くと米大統領選の候補が宣言するような米・メキシコ関係と中露関係は逆だ。中露間では人を送り出す中国の方が、ロシアに対して優位に立つ。
20年後の知事は中国人!?
ソ連崩壊後に過疎化が進行した極東で、労働力不足は深刻だ。耕作放棄地が増え、地元住民だけでは到底、維持しきれない。
米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿したロヨラ大シカゴ校のコダルコフスキー教授によると、過去10年で日本の面積の2倍超の約80万平方キロの農地が中国人に安価にリースされた。そこでは大豆やトウモロコシ、養豚など大規模な農業ビジネスが展開されている。
中国と接する極東のザバイカル地方は今年、東京都の半分にあたる1150平方キロの土地を中国企業に49年間長期リースすることで基本合意した。1ヘクタールあたり年500円余という格安だ。これに対しては「20年後には知事が中国人になりかねない」などと、ロシア国内で猛反発も起きた。