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「奪われた領土」極東ロシアに流れ込む中国人…スーツケースで侵略は危険な火ダネ

 人口が希薄なロシア極東に中国人が流入し、ロシア人を心理的に圧迫している。ロシアの調査機関は今世紀半ばを待たず、中国人がロシア人を抜いて極東地域で最大の民族になると予測する。中国人には19世紀の不平等条約でウラジオストクなど極東の一部を奪われたとの思いがあり、ロシア人には不気味だ。欧米に対抗して蜜月ぶりを演出する両国首脳の足元で、紛争の火だねが広がっている。(坂本英彰)

中国人150万人が違法流入

 「中国人がロシアを侵略する-戦車ではなくスーツケースで」

 米ABCニュースは7月、ロシア専門家による分析記事を電子版に掲載した。露メディアによると、国境管理を担当する政府高官の話として、過去1年半で150万人の中国人が極東に違法流入したという。数字は誇張ぎみだとしつつも、「国境を越える大きな流れがあることは確かだ」と記す。

 カーネギー財団モスクワ・センターによると在ロシアの中国人は1977年には25万人にすぎなかったが、いまでは巨大都市に匹敵する200万人に増加した。移民担当の政府機関は、極東では20〜30年で中国人がロシア人を抜いて最大の民族グループになるとしている。

 インドの2倍近い広さがある極東連邦管区の人口は、兵庫県を少し上回る630万人ほど。これに対し、国境の南側に接する中国東北部の遼寧、吉林、黒竜江省はあわせて約1億人を抱える。

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