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満鉄自慢の超特急「あじあ」は、パシナ型蒸気機関車と客車(1~3等)・食堂車・手荷物郵便車の計7両編成。列車全体が流線形の美しいフォルムで統一されていた。
最後尾の展望1等車は「あじあ」の売り物のひとつ。それまでの開放デッキ型の展望車と違って、大きな曲面ガラスをはめ込み、豪華な安楽イスやソファ(定員12人)でくつろぎながら満州の景色を楽しめるサロンになっていた。
1等車の逆サイドには、コンパートメントの特別室がある。大人4人が楽に座れる個室で、政治家や軍の幹部、会社社長らがよく利用したという。
豪華・高速の「あじあ」は料金も高い。1等車に乗って大連から新京(701・4キロ)に行くと、特急料金を含めて36円90銭(昭和9年の営業開始時)。約8時間半の乗車で、現在の価値で7万円強。食堂車で食事(和・洋定食とも1円50銭)や名物のあじあカクテル(50銭)を楽しめば、さらに財布は軽くなる。
給仕係は「美人揃い」
「あじあ」の食堂車に金髪、碧眼のロシア人ウエートレスが登場するのは、10年にハルビンへの延長運転開始以降である。
天野博之著『満鉄特急「あじあ」の誕生』には、当時の新聞記事の引用でこうある。《白系ロシア人の娘65人の応募者を面接し(略)11人を採用した。女学校を卒業した16歳から21歳の美人揃い…》。白系-とはロシア革命(1917年)から満州などへ逃れてきたロシア人のことだ。
旅客専務として「あじあ」に乗務した冨祐次(とみゆうじ、98)はロシア人ウエートレスのことをよく覚えている。「食堂車に配置されたウエートレスは大体が3人ぐらいで、内1人はロシア人だった。ハルビンなどに住んでいた娘が多く、日本語も上手でしたよ」