証券取引所のほか、銀行や保険など、世界を代表する金融機関のビル群が林立する上海市内の国際金融センター。中国人民銀行(中央銀行)の幹部はテラスでウイスキーのグラスを傾けながら、「67歳の誕生日にふさわしい日になりそうだな」とつぶやいた。
1949年に毛沢東が北京で「中華人民共和国」成立を宣言して、1日で67年を迎える。中国経済を象徴する通貨「人民元」がこの日、米ドルに並ぶ国際通貨になったことに幹部は深い感慨を抱いていた。ドル、ユーロ、日本円、英ポンドに続く国際通貨基金(IMF)5番目の特別引き出し権(SDR)構成通貨に正式に組み込まれたのだ。
2010年に日本を追い抜き国内総生産(GDP)で米国に次ぐ世界第2位に台頭した中国。国慶節と呼ばれる1日、通貨でも世界の中心に躍り出たとして、「SDR」の3文字が国威発揚につながる文脈で喧伝(けんでん)されることになる。
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そこには深遠な野望も見え隠れしている。「最終目標は中国経済の規模に相当する通貨の地位を得ることだ」。中国人民大学の国際通貨研究所は、「2016年版人民元国際化報告」をまとめ、こんな目標を掲げた。一方で、人民元のSDR組み込みは「一里塚に過ぎない」と戒めた。