ただ、中軸で起用したこともあったように打者として評価していなかったわけではなく、投手としての能力にほれ込んでいたようだ。「甲子園で20勝を挙げる投手はもう出てこないでしょう。しかもあえて直球とカーブしか投げなかった。1年生であれだけの球をほうる投手は桑田以外にみたことがない」と口をつくのは絶賛の数々。中学までは投手で甲子園のマウンドも踏んだ清原が、桑田が投げるボールをみて投手断念を決意したというのも有名な話だ。
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桑田が甲子園で残した打撃成績は104打数37安打、打率3割5分6厘。ほぼ同じ投手と対戦した清原の91打数40安打、打率4割4分には及ばないまでも文句なしの好成績だ。プロ入り後も投手に専念しながら、890打数192安打の打率2割1分6厘、7本塁打の数字を残した。恩師が認めた投手としての才能を存分に発揮したスターではあった。だが、甲子園で残した打撃の印象も鮮烈だっただけに、打者として歩んだかもしれない野球人生を夢想せずにはいられない。