東京電力福島第1原発事故の影響で、いまなお小規模な操業と販売の「試験操業」が続く福島県沖の漁業。今月から同県が誇る「常磐(じょうばん)もの」を代表するヒラメの試験操業が始まった。これを機に本格操業につなげたいと、地元の期待が高まっている。(平沢裕子)
対象は92種に拡大
「福島県沖で取れるヒラメは、煮付けるときに十字に切れ目を入れると身がはじけるように反り返るほど引き締まっている。刺し身にしても煮付けにしてもおいしい。ヒラメ漁の復活は漁業者にとって希望の光」
同県相馬双葉漁協理事の立谷寛治さん(64)は8月、東京都内で開催された漁業復興セミナーでヒラメ漁への期待を語った。
福島県沖は、寒流系の親潮と暖流系の黒潮のぶつかる場所で、豊かな漁場が形成されている。水揚げされる水産物は「常磐もの」と呼ばれ、築地市場の目利きたちから評価されてきた。
しかし、原発事故を受け、同県沿岸の漁は自粛を余儀なくされた。
同県は平成23年4月から水産物の放射性物質の影響調査を開始。国の基準値を超えた魚種は出荷制限の対象となった。その後、24年6月から試験操業を開始。当初はミズダコ、ヤナギダコ、シライトマキバイの3種だけだった対象魚種は現在、92種に拡大した。27年4月以降は基準値を超える水産物はない。