8月上旬には、2015年のアイフォーン関連ビジネスで日本企業865社と取り引きし、取引総額は300億ドル(約3兆円)に上ったと発表した。さらにアプリ開発企業を含めると71万5000人の雇用を生み出したとしており、アップルがいかに日本企業の役に立っているかを強調している。
税金逃れで追徴120億円
しかし、9月には音楽や映像のインターネット配信を行うアップルの子会社「iTunes(アイチューンズ)」(東京都港区)が、アイルランドのグループ会社に移転した利益の一部が国内の配信事業のソフトウエア使用料に当たり源泉所得税の対象となるとして、東京国税局から120億円の追徴を受けていたことが判明。アイフォーン販売が日本の経済を潤していると良い子ぶっても、裏で日本に収めるべき税金を一時しのぎの手段で逃れていた実態が浮き彫りになった。
欧州連合(EU)でもアップルに対する税優遇措置をめぐり独禁法上の問題が指摘されている。
総務省の幹部は一連のスマホ販売の適正化措置の狙いについて、「民間取引ではあるが、アップルと携帯3社との取引条件見直しまでいかなければ意味がない」と話す。
規制当局がアップル包囲網を敷き、アップルは日本市場へのさらなる食い込みを狙う中、取引条件の是正よりスマホ販売競争を優先する携帯3社は、公取委の独禁法違反懸念にも「前向きに対応する」としている。
ただ、これは表面上だけで、「結果的にスマホが売れなくなるのが一番怖い」(携帯会社役員)というのが本音だ。アイフォーン7になってもアップルにつけ込まれる状況は変わりそうもない。(芳賀由明)