都市を生きる建築(76)

今でも現役、船場商いの歴史伝える「旧小西家住宅」

 小西家も、初代小西儀助が1870(明治3)年に薬種商を創業したことにはじまる。その後関西で最初に洋酒の製造を始めるなど新規事業を興し、2代目儀助のときに現在の地に300坪を超える土地を購入、3年の歳月をかけて1903(明治36)年に現在の町家を完成させた。その頃まだ堺筋は細い道で、1912(明治45)年に市電が開通する前年に、いわゆる「軒切り」によって敷地西側の幅4間分を道路用地に収用された。堺筋の印象的な黒漆喰の壁は、その際の改修によって復旧されたものだ。また竣工当初の母屋は3階に望楼が設けられていたが、関東大震災の後に地震が心配ということで撤去された。現在も、内部には3階に上る行き止まりの階段だけが残されている。

 節目の大改修によって姿は変わったものの、旧小西家住宅は現在も大阪の町家を代表する存在であることには変わりない。店はその後コニシ株式会社と社名を変え、現在は接着剤のトップメーカーとして知られるが、今も町家はグループ会社のオフィスとして現役で使われている。まさに生きた建築だ。小西家が暮らした奥の住居部分は当初の意匠が今も残り、厳選された素材がふんだんに用いられ、随所に見事な細工が施されている。基本的には非公開だが、地元の地域活性化イベントのときには会場に利用されることもあり、船場の人々にとってのハレの場となっている。(高岡伸一/建築家・大阪市立大学特任講師)

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