昭和42年、東京都知事に就任した美濃部亮吉氏は、後に岩波書店社長となる安江良介氏を特別秘書に指名する。朝鮮大学校を各種学校として認可する問題について、早急に決着をつけるよう進言したのは、安江氏だった。
▼当時の文部省は難色を示した。「朝鮮大学校の教育内容は、北朝鮮系の在日朝鮮人の基幹教育を行う学校だ。料理、花嫁学校とは、おのずと性格が違う」。まっとうな理屈である。にもかかわらず、美濃部知事は「憲法に従って」、翌年認可に踏み切った。
▼これを機に、朝鮮学校を学校法人として認可し、補助金を支給する動きが全国に広がってしまう。美濃部氏は46年に平壌を訪問して、当時の金日成(キム・イルソン)首相と会談する。安江氏の訪朝は5回にも及ぶ。さぞかし、熱烈な歓迎を受けたことだろう。
▼その間、朝鮮大学校では金一族への崇拝を押しつける教育が続いてきた。昨日の小紙は、それを象徴するような出来事を伝えていた。朝鮮大学校が今年5月、金正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長に対して、日米壊滅をめざす、との内容の手紙を送っていた。学長はさらに、米国圧殺運動の展開を在校生に指示したという。もっとも在校生の間では、異様な思想教育に反発する動きも出ているようだ。
▼平成14年の日朝首脳会談で、金正日(ジョンイル)総書記が日本人拉致を認めたとき、美濃部氏も安江氏もすでにこの世を去っていた。今では、朝鮮学校の元校長が拉致の実行犯として事件に関わり、国際手配されている事実まで明らかになっている。
▼拉致問題に深い関心を寄せてきた小池百合子東京都知事は、朝鮮総連の強い影響下にある朝鮮大学校の認可を見直す可能性がある。過去の知事が犯した過ちを現在の知事が正す。まことに筋が通っている。