衝撃事件の核心

「必ずお前を殺す」夫の壮絶DV、母娘孫無戸籍30年の悲惨 「民法の壁」へ苦悩の提訴

喫茶店で話し合いをしたときには、暴力を振るわれ、夫の車に引きずり込まれそうになったことも。そのとき、車内に積まれたガソリンタンクを見て「焼き殺される」と思い、通行人に助けを求めた。取り合ってはもらえなかった。

「お前が逃げれば、子供を殺す。お前と子供が逃げればお前の親や親族を殺す」。危害が加えられる恐れは自分以外にも及んでいた。福祉施設や家庭裁判所に足を運び、なんとか子供だけでも保護してくれるよう頼んだが、当時はDVに対する認知度も低く、対応してくれなかった。

「このままではいつか殺されると本気で思っていた」。いつでも逃げられるよう、少しの現金を玄関の郵便受けにしのばせていたという女性は昭和57年のある早朝、子供を連れ、ついに家を飛び出した。

「夫の証言」という壁

子供を親族に預け、半年間で15回の引っ越しを繰り返した。居場所を知られないために、ダミーの家も用意した。

「外を歩いていても、夫がいたらと思うと顔を上げられず、家に入るときは周囲を警戒するなど、毎日生きた心地がしなかった」

その後、別の男性と暮らすようになり、58年、男性との子となる娘を出産した。男性を「父」とする出生届を提出したのだが、娘を妊娠したのは、夫の元から逃れて別居してから3カ月後のことだった。

民法772条には「妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する」という「嫡出推定」が規定されている。娘は夫の嫡出推定が及ぶとして、男性を父とする出生届は不受理となり、娘は無戸籍となった。

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