現代の残る遊郭とも称される大阪市西成区の通称「飛田新地」。大小約160の料亭が集まり、料亭の玄関には、妙齢の女性が座る。表向きは自由な恋愛、実質的には半ば公然と売買春が行われているとされる場所だが、その内幕を明らかにした書物は少ない。このほど、『飛田をめざす者』(徳間書店)を出版した元料亭経営者の男性から話を聞いた。
飛田新地の料亭のオーナーは「親方」と呼ばれる。著者の杉坂圭介さんは50代の男性。執筆の動機は「売られてきた女性が働かされているとか、ヤクザが絡んでいるとか、いわれのない悪評を払拭したかったから。僕なりの奮闘も記したかった」。本名も年齢も明らかでないが、徳間書店の担当編集者は「内容についてはほぼ事実」と太鼓判を押す。
杉坂さんによると、知人の紹介で約10年間、「親方」として料亭の経営に携わった。その後は、働き手となる女性を料亭に紹介するスカウトとなり、昨年9月からは再度、料亭の親方に。現在はまた、スカウトに戻ったという。
著書では、飛田での遊び方のシステムが詳細に語られる。15分1万1000円、20分1万6000円、1時間4万1000円など、店頭の駆け引きは多少はあるが、その明朗会計ぶりが明かされる。取り分は50%が接客する女性、10%が「オバちゃん」と呼ばれる客引きの女性だ。
飛田で働く女性は、自由意思が大原則だ。しかし、辞めるに辞められなくなるケースがほとんどという。「最初は、借金を返そうとか、これだけ貯めたら辞めようと思って入ってくるみたいだけど、その日その日に何万円も現金を手にするようになると、自然と金遣いが荒くなる。普通の勤めだと、働き始めて1カ月しないと給料が入ってこない。それに我慢できず、結局、抜けられなくなる」と話す。