水中考古学へのいざない(6)

730年の長い眠りから目覚めた元寇船 謎多き「蒙古襲来」実態解明なるか

 かつてこの海に潜った際の感慨が蘇り、「ぜひとも自分の目で元寇船を見てみたい」と強く願った。

†世界注目の大発見

 にわかに脚光を浴びる鷹島は翌12年、南岸沖合の海域38万平方メートル余が「鷹島神崎(こうざき)遺跡」として水中遺跡では初の国史跡に指定された。さらに14年には、同遺跡の東約200メートル、深さ約14メートルの海底から2隻目となる「鷹島2号沈没船」が見つかった。船体の引き揚げを期待する声もあるが、当面は現場で保存されるという。

 この世紀の大発見の周知に力を入れる松浦市は、AR(拡張現実)やCGを使って蒙古襲来時の疑似体験や乗船体験ができるスマートフォン用アプリ「AR蒙古襲来~甦(よみがえ)る元寇船」を開発。中田課長は「今後も新たな発見は続くはずで、多くの人に興味を持ってもらいたい。鷹島が日本の水中考古学調査の拠点になれば」と話す。

 世界最大の海難事故、元寇の実態解明につながる2隻の発見は、鷹島海底遺跡の存在を世界的に認知させることになった。船舶史、軍事史、科学技術史を知る上での宝の山であり、今後の検証によってアジア史や世界史の研究にも大きく寄与するだろう。

 鷹島では、長崎県埋蔵文化財センターとNPO法人「アジア水中考古学研究所」(福岡市)が、琉球大のチームとは別の海域で調査を行っており、新たな元寇船の発見が期待される。私も再び鷹島の海に潜り、心ときめく調査に関われればと切望している。(水中考古学者 井上たかひこ)