衆院福岡6区補欠選挙(10月11日告示、23日投開票)は告示まで1カ月を切ったが、鳩山邦夫元総務相の次男、二郎氏(37)=前福岡県大川市長=と、自民党県連会長の蔵内勇夫氏の長男、謙氏(35)の党公認争いは決着を見ない。蔵内氏の陣営は、党の世論調査で劣勢が伝えられるが、「伸びしろがあるのはこちらだ」と、形勢逆転に自信をのぞかせる。
(九州総局 村上智博)
今月10、11両日、自民党党本部は福岡6区の世論調査を実施した。支持率の結果は、50%近い鳩山氏に対し、蔵内氏は15%だった。党本部は8月以降、繰り返し調査を実施するが、差は縮まらない。
このデータを基に、古屋圭司選対委員長が、蔵内氏に対し、選挙戦から降りるよう暗に促すこともあった。
だが、蔵内氏と党福岡県連は、この要請をはねつけた。
党県連は7月末、蔵内氏支持でまとまり、党本部に公認を申請した。以来、県議団(43人)を中心に、蔵内氏の支持拡大に努める。
■エンジン全開
自民党県議団会長で、蔵内氏の選対本部長代行を務める原口剣生氏は今月7日、同党の県議を前に声を上げた。
「蔵内氏は県連の推薦をいただいている。6区で知り合いの名簿を集め、外から支援の輪を広げていってほしい」
1週間後、厚さ2センチもの名簿が集まったという。
ある県議は「党本部が蔵内氏に公認を出さなくても、県連として推薦する。自民党候補だと正面から名乗り、動けるのはこちらだ。それは強い。鳩山氏は『自民党の二郎です』とは名乗れない」と強調する。
蔵内陣営は9、10両日で、県議やその秘書ら計約500人を集めた。蔵内氏を紹介する冊子を選挙区内で配り、知名度向上を図った。
「福岡県政界のドン」と呼ばれる父の勇夫氏も、エンジンがかかる。出身高校の関係者に自身で電話している。
さらに、鳩山陣営の切り崩しを図る。
久留米商工会議所の政治団体である「日本商工連盟久留米地区」は鳩山氏へ推薦を出した。蔵内陣営はこの団体に対しても、推薦を求めている。
蔵内陣営は、鳩山氏が歩いた後を追うように、挨拶回りをこなす。連立政権を組む公明党や、集票力を持つ県農政連などとも、水面下で接触を重ねる。
蔵内陣営は18日に、選対本部長の麻生太郎副総理兼財務相と、選対顧問の古賀誠元幹事長の2人がそろい踏みする場も設定した。
選挙区内の久留米市や小郡市で街頭演説に立ち、蔵内氏支持を訴える。
「調査数字に差はあるが、鳩山ブランドを持つ二郎氏の勢いは今がピークだ。逆に蔵内氏には伸びしろがある。人情論で票が鳩山氏に流れることはあっても、いずれ接戦に持ち込める」
ある県連関係者は、こう予想した。
一方、鳩山氏は現在のリードの維持に懸命だ。陣営幹部は「こちらが竹やりで攻めるのを、蔵内氏側は戦車でどんどん攻めてくる。それが肌感覚でも分かるようになってきた。こちらの後援会幹部にも『蔵内謙を頼む』と電話があったほどだ」と引き締める。
■蓮舫効果は?
新代表に蓮舫代表代行が決まった民進党は、党勢回復の試金石として、議席獲得を目指す。
元インド・チェンナイ日本総領事館職員の新井富美子氏(49)の擁立を決めている。
民進党福岡県連幹部は「わが党として初の女性党首と、女性候補の新井氏との相乗効果に期待したい。発信力もあるし、6区には蓮舫氏に繰り返し応援にきてほしい」と語った。
だが、党代表選で発覚した「二重国籍」問題が、臨時国会などで、くすぶり続けるのは間違いない。
党筑後地区委員長の小林解子氏(36)の擁立を決めている共産党との「共闘」を含め、蓮舫効果がどのような結果をもたらすか、予断を許さない。