「地域の足」といえるローカル鉄道の廃止が全国で相次いでいる。国土交通省によると、平成12年以降、全国で38路線が廃線となった。兵庫県では、神戸と三木、小野の3市をまたぐ神戸電鉄粟生(あお)線(鈴蘭台-粟生)が存続の危機にさらされている。4年度の1420万人をピークに乗客減が続き、27年度は646万人にまで減った。マイカーや神戸・三宮に向かう路線バスに乗客を奪われたためだ。沿線自治体の利用促進運動も劇的な効果はなく、赤字が慢性化する同社は、線路の土地や駅舎などを沿線自治体に有償譲渡し、同社が無償で借り受けて運行する公有民営式の「上下分離方式」を提案。しかし、負担増への懸念から自治体側の反応は鈍い。県と3市による同社への無利子融資も今年度までで、存続への見通しは不透明な情勢となっている。(岡本祐大)
日中はがらがらの車内
ある昼下がり。鈴蘭台駅(神戸市北区)を発車する粟生駅(小野市)行きの電車に乗った。3両編成の電車は急勾配(こうばい)をゆっくりと登りながら北へと向かう。しばらくして、車窓からはうっそうと茂る山林の景色が見え、その後、田畑や住宅が点在するのどかな田園風景が続く。
朝夕のラッシュ時には通勤通学の人たちで適度に混雑する同線だが、日中の車内は乗客もまばらで、高齢者ら5~6人が乗り合わせている程度。途中の停車駅から乗ってくる人はほとんどおらず、田舎を走るローカル線というイメージにピッタリだ。
50分ほどして終点の粟生駅に到着した。同駅はJR加古川線や北条鉄道と接続しており、乗り換え客らは足早にホームを立ち去っていった。
小野市によると、粟生駅は近くの県立小野高校などに通う多く生徒らのほか、通院する高齢者らが利用している。仮に粟生線が廃止になると通学の足がなくなり、将来的に小野高校などへの進学者が減ることも予想され、市は危機感を募らせている。