「シニア就労」福岡が先導し20年 県高齢者能力活用センターきょう式典

 企業に経験豊富な高齢者を派遣する公益社団法人福岡県高齢者能力活用センター(愛称はつ・らつ・コミュニティ)が10月、設立20年を迎える。全国に先駆けて平成8年に発足し、高齢者の再雇用支援に取り組んできた。このほか福岡県内では今年8月、高齢者対象のハローワークが北九州市に誕生するなど、シニア就労の「先進地」といえる。 (九州総局 奥原慎平)

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 同センターには、就労を希望する高齢者と、受け入れ先の企業がそれぞれ登録する。現在の登録高齢者は9千人を超えた。実際の派遣者数も16年の延べ1533人から、27年は延べ7120人と、4倍以上に増えた。

 センター発足当時、高齢者の就労支援に積極的に取り組む団体は、全国を見渡しても少なかった。「超高齢社会」は懸念されていたが、総人口における65歳以上の割合(高齢化率)は15%程度で、「将来の問題」という認識が主流だったからだ。現在、高齢化率は26%を超えた。

 その中で、福岡県内の主要企業や経済団体でつくる福岡産業振興協議会が、センター設立を支援した。

 センター理事長の小早川明徳氏は「福岡ならではの密接な企業間の結びつきがあったので、地域が連携して設立を支援できた。長寿社会では、シニア層も社会を支える大きな構成要素となる。辛抱強さや社会経験を強みにしてほしい」と振り返った。

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 高齢者の就職支援はこれだけではない。

 福岡県は24年度、シニア層に再就職先を紹介する「70歳現役応援センター」を設立した。ここでは専門相談員が、就業やボランティア参加について助言するほか、県内企業に定年の引き上げを働きかける。

 福岡県の取り組みも参考に、自治体が主体となった同様の組織が宮崎や大分、熊本、長崎で設立された。

 一方、北九州市と福岡労働局は今年8月29日、同市戸畑区に、50歳以上の就労を支援する「シニア・ハローワーク戸畑」を開設した。

 相談員1人と専従職員3人の計4人が対応する。おおむね50歳以上を対象に、職業相談を受け、求人情報を提供する。

 国家戦略特区制度の活用で、世代を絞った就労支援が可能になった。UターンやIターン希望者にも積極的に情報を提供し、就労者受け入れを図り、地域活性化につなげる。

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 国内の65歳以上の就業率は20・8%(26年)と、世界で最も高い水準だ。それでも就労を希望する高齢者は多い。内閣府が公表した28年版「高齢社会白書」によると、65歳以上で就労を希望する割合は55・3%に上った。

 少子化による労働力不足や、団塊の世代が全員、75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」への対応も迫られる。

 安倍晋三首相は、「働き方改革」を政権最大のチャレンジと位置づけ、高齢者の就労支援に力を入れる。

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 福岡県高齢者能力活用センターの設立20周年記念式典は13日、福岡市中央区のエルガーラホールで開かれる。同県久山町ヘルスC&Cセンター副センター長の角森輝美氏らによるパネルディスカッションなどが開かれる。

 そのほか落語家、笑福亭鶴笑さんの寄席や、大手旅行会社によるクルーズ船旅行の紹介や、健康サプリメントの試供、相続相談コーナーもある。開場は正午、式典は午後2時から。

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