女性は今回の問題より前からA社の商品を少しずつ購入しており、女性従業員とは面識があった。夫はすでに他界。25年9月に妹も亡くし、遺産500万円を相続すると、展示会への誘いが頻繁になったという。
手元に残った大量の毛皮や貴金属には証明書や鑑定書がついていなかった。並または並以下の質の量産品で、財産価値がかなり低い品をつかまされた可能性が高いというのだ。
ややこしいことに、女性従業員はA社とは別の毛皮・宝石販売会社B社(岩手県)の従業員でもあるとみられ、女性側はA、B両社と女性従業員の3者を相手取って購入代金の返還を求めて提訴。訴訟では一連の販売手法について「公序良俗に反し、不法行為だ」と批判している。
一方の被告側は8月にあった第1回口頭弁論で請求棄却を求め、争う姿勢を示した。
「断る力」の減退
国民生活センターによると、「次々販売」の手法はかなり以前からあるが、この商法に名前がついたのは6年のことだという。着物や布団、健康食品のほか、金融商品の売りつけなどバリエーションは豊富だ。
22年には、奈良市内の女性=当時(83)=が訪問販売で呉服や絵画、宝飾品を次々と購入させられたとして、業者などに代金返還を求めた訴訟があった。奈良地裁は「女性の態度などから、認知症による財産管理能力の低下に気付くことができた」と認定し、業者に約1390万円の支払いを命じるなど、各地で訴訟は絶えない。