書評

美術ジャーナリスト・藤田一人が読む『人工地獄 現代アートと観客の政治学』 参加型アートの課題とは…

 こうした歴史的展開から浮かび上がってくるのは、参加と民主なる言葉の相関関係だ。ある意味参加型アートは民主主義の体現といえる。一人一人が選挙を通して政治に参加し、民意が社会を動かす民主主義とは、政治家と国民が国家や共同体を協働して作り上げることであり、参加型アートの芸術家と鑑賞者の関係と同じ。ただ、民主主義が時に不条理な差別や過酷な対立を生み出すように、参加型アートは社会の負も映し出す。それでも民主と参加は私たちの大いなる希望だ、と本書は印象づける。(クレア・ビショップ著、大森俊克訳/フィルムアート社・4200円+税)