ところが、この2人には因縁があった。ソン総監督は一度、チョン氏を美術監督として起用しようとしたが、チョン氏が拒否して失敗していた経緯があった。となれば、複雑な人間心理。いつしか「主導権争いが生じ」(SBS)、辞任に発展する遺恨に至ったという。
実際、韓国の伝統と文化の良さをしっかりと示すことに焦点を当てようとしたチョン氏に対し、ソン総監督は小学生でも面白く見られることを構想した。「いくら分かりやすく作るとしても、芸術的な奥深さは持つべきではないか」とチョン氏は批判した。考え方の違いによって溝は広がり、「ことごとく衝突した。とても一緒にできなかった」と明かした。
ただ、この決別で困ったことが生じた。8月初めに大統領府に報告した企画案はチョン氏のアイデアが80%も採用されていた。企画を100%表現できるのは、立案した当事者である。といって、企画を変更しようにも開催まで2年を切った現状では時間的余裕がない。SBSは「成功した演出が保障できない危機に置かれた」と批判した。
このドタバタ劇には前段があった。ソン総監督自身も開幕1000日前に適任者を選出する予定だったのが大幅に遅れ、ようやく決まった人物だった。選任時には「他にいなかったのか」などとネット上で不安視されていた。