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「誰か心臓マッサージをできる人いますか?」
北海道・陸上自衛隊旭川駐屯地。衛生技術の実習を行う即応予備自衛官の誰よりも率先して声を出した。「反復して自信がなければ、実際に実践することはできませんから」
短大卒業後、陸上競技を続けるため、当時スポーツに力を入れていた陸自に入隊した。自衛隊が主催する大会の駅伝チームの選手として活躍し、28歳で退官すると同時に即応予備自衛官となった。
その後は年30日の訓練を毎年こなしてきた。東日本大震災では「現場に行けるか」と連絡を受け、覚悟を決めた。結局、自らの派遣はなかったが、自衛官である夫は遺体捜索の任務に従事した。
現在は旭川市の幼稚園で栄養士を務めながら、衛生技術の習得や指導を行っているが、実は自衛隊での経験を生かした、もう一つの顔がある。
退官後に自分の体力を試そうと参加したサロマ湖100キロウルトラマラソンで上位入賞し、それをきっかけに日本代表として世界選手権に連続出場。個人として最高6位、日本団体として銀メダル獲得に寄与した鉄人ウーマンだ。
さらに100キロ女子では世界1位のタイムを記録したこともあるなど、走る能力は並の男性自衛官をしのぐ。
「選手として今の私があるのも自衛隊があってこそ。私の人生の全てです。この体力、衛生技術も含めて役立てたい」。そう話し、目を輝かせた。(杉浦美香)