浪速風

ノーベル賞でもおかしくない

太平洋戦争の開戦まもなく、日本軍はシンガポールを攻略した。そこで英軍のレーダーに関する機密文書を押収する。「YAGI」という言葉が頻繁に出てくるが、意味がわからない。捕虜の将校を尋問すると、驚いた様子で言った。「本当に知らないのか? アンテナを発明した日本人の名前だ」

▶レーダーは電波を発射して、目標物からの反射を利用してその位置を知る。指向性アンテナによって飛躍的に性能が向上した。八木秀次は日本でもレーダー開発の必要性を訴えたが、軍部は「敵に向かって電波を照射するなど、居場所を教えるようなものではないか」。価値に気づかずに後れを取った。

▶八木と共同開発者の宇田新太郎の名をつけた「八木・宇田アンテナ」は、戦後になってようやく脚光を浴びる。家々の屋根にずらり並んだアンテナは、テレビ時代を象徴する光景だった。未来技術遺産に選ばれたが、本来ならノーベル賞級の発明だったかもしれない。