九州電力は、鹿児島県の三反園訓知事から出されていた同社の川内原子力発電所1、2号機(同県薩摩川内市)の即時停止要請について、応じられない旨を回答した。
とはいえ「ゼロ回答」ではない。10月と12月から始まる1、2号機の定期検査での運転停止中に専門チームを組織し、要請のあった確認事項などの特別点検を実施する。それにより安全性の再確認をするためだ。
適切な判断、対応である。知事の強権に屈して妥協するのではなく、原発の安全を最優先に運転継続を図る。電力の安定供給と二酸化炭素の排出削減という、電力会社の社会的使命を貫く姿勢も同時に示すものと評価できる。
三反園氏が回答に難色を示し、「再度の一時停止要請を検討する」としているのはおかしい。そもそも、知事には運転中の原発を止める法的権限がないのだ。
この一件は、7月の鹿児島県知事選での三反園氏の選挙戦略に端を発している。出馬を取りやめた反原発派陣営との調整で「川内原発の停止」などを公約に盛り込んだ経緯がある。
本来、無理筋の公約だった。にもかかわらず、先月26日には九電の瓜生道明社長を県庁に呼びつけて、川内原発2基の即時停止などを強く求める命令的な要請文書を手渡した。
法的根拠を欠いた自らの公約の尻拭いを、九電に一方的に押しつけるに等しい行為を重ねているとみなされても仕方ないだろう。