主張

中国とG20 不都合を覆い隠す議事運営に終始、習近平氏の独り舞台にすぎぬ

 中国・杭州での20カ国・地域(G20)首脳会議が閉幕した。

 世界経済の失速回避に向けた政策の総動員が首脳宣言に盛り込まれる一方、南シナ海など経済を論じる以前の重大な懸念事項は排除された。

 ホスト国である以上、ある程度想定されたことだが、協調ばかり演出し、中国にとって不都合な現実は覆い隠す議事運営に終始した。その印象は免れない。

 中国は、習近平国家主席が議長役を務めるG20を「今年最大の外交日程」と位置づけていた。

 指導力を内外に誇示する機会であるとともに、中国経済が低迷する中でメンツを失うことだけは絶対に避けねばならなかった。

 外交や安保を封印するため、各国が抱く経済問題での懸念への対応を迫られる形ともなったが、どこまで中国が真摯(しんし)に受け止めたのかは疑問である。

 G20は鉄鋼の過剰生産問題を協議する国際フォーラムの設置を決めた。中国の鉄鋼製品の安値輸出が市場をゆがめ、他の生産国に打撃を与えているためだが、問題解消への前進とみるのは早計だ。中国は過剰生産への対応を約束しても国内改革が進んでいない。

 むしろ、G20が保護主義への反対を再確認したことを都合良く解釈し、中国製品に対する欧米などの反ダンピング(不当廉売)措置を妨げないだろうか。警戒を怠ってはなるまい。

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