午前3時半。山間部にある集落の静寂を引き裂いたのは、50匹以上の犬のほえ声だった。「また始まった…」。早朝にはけたたましくニワトリが鳴く。うるさい、眠れない、仕事ができない…。夜ごと、朝ごとに繰り返される動物たちの「大合唱」に、ついに近隣住民がキレた。ペットサロン関連施設の騒音で精神的苦痛を受けたとして、大津市に住む夫婦が、サロン経営者に計約300万円の慰謝料を求める訴訟を大津地裁に起こした。個人宅のペットでも、鳴き声はしばしば近隣トラブルの原因になる。それがペットサロンの犬舎となれば、その音量は比較にならない。裁判所が下した判断は-。
ある日突然、隣に…
原告となった40代の夫婦は大津市内の山間部で、約10年前から平穏な生活を送っていた。夫は会社員。妻は自宅でホームページ制作の仕事をしていた。
だが、同市のペットサロンが夫婦宅の隣地を購入してからというもの、その環境は一変した。
訴状などによると、ペットサロンの店舗は別の場所にあり、夫婦宅の隣地には販売するための犬を繁殖・飼育する施設が平成25年2月に設営された。昨年11月時点で、犬舎内では、トイプードルなどの小型犬約50匹がケージに入れられて飼育されていたほか、フェンスで囲まれた外の運動場では、大型犬のグレートピレニーズ2匹が放し飼いになっていた。犬以外にも、ニワトリ6羽が鶏舎で飼われていた。
施設は普段無人で、平日に短時間、従業員や経営者本人が餌を与えに来ていたものの、掃除は行き届かず悪臭がひどかった。だが、それよりも夫婦を悩ませたのが、犬やニワトリの鳴き声だった。