上州この人

利根商野球部監督・豊田義夫さん(80)

 ■指導60年、ノックに込める哲学

 近大付(大阪)を春のセンバツへ3度導いた名将が、利根商で指揮を執り始めて約1年。今夏の県大会では8強に進出するなど着実に自身の野球哲学を浸透させている。80歳となった今もグラウンドで自らノックバットを振る。高校野球に対する熱い思いを聞いた。(吉原実)

 --高校野球で監督をやり始めた経緯は

 「経済的理由から高卒で就職したがうまくいかず、失職中に母校の近大付でボール拾いでもしようか、とグラウンドへ向かった。その姿を大の野球好きだった当時の校長が見ていてくれ、『学校に勤めてみたらどうだ』と。コーチを9年間やり、その後監督になりました」

 --利根商に来るきっかけは

 「昨年2月下旬ごろ、親交のある元プロ野球選手、団野村氏から『監督をやる気力はありますか。実現する可能性があるから前向きに考えてください』と言われたのがきっかけです」

 --当初から引き受けるつもりだったんですか

 「年齢が年齢だから半分あきらめて聞いていたんです。ただ、電話を切った瞬間、妻が『行くんでしょ』と聞いてきて、『もちろん』と」

 --関東で、かつ公立校を指揮するのは初めて…

 「大阪には骨になって帰るつもりで群馬にお世話になりたいと思います。グラウンドにぶっ倒れるくらい、自分の命を投げ出すくらいの覚悟がないといけないと思っている」

 --ご自身にとっても初となる夏の舞台を当然狙いますか

 「どの監督も夏の甲子園を狙っています。ただ、2、3年で甲子園へ行けるなんて夢のまた夢です」

 --群馬の野球に対する印象は

 「率直に言ってレベルは高い。ずば抜けて3、4校が強い。それから1段階下がると横一戦。参加チームはみなダークホース」

 --自らノックすることにこだわるそうですね

 「ノックは無言の会話。打っているときの気持ちが選手に通じたら最高です」

 --「高校野球は教育だ」と常々おっしゃっています

 「守りから入る野球を大切にし、モットーは『取るべきは取る、生きるべきは生きる』。どんな場面でも力を抜いたらだめだと。人間にはチャンスがある。ここがチャンスと思えばつかむ、徹底して突き進む。これを伝えたい。社会に出てから役に立つとも思います。そして、ここで野球ができてよかったと思い、胸を張って生きてくれたらうれしいです」

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【プロフィル】とよだ・よしお

 昭和10年、大阪府八尾市生まれ。31年母校・近大付のコーチとなり、40年から監督に。42、46、50年と3度の春のセンバツ出場へ導く。59年、同校監督を退任し、近大付福山、近大付新宮、近大付泉州を平成25年6月まで指揮する。27年秋、利根商の監督に就任。指導歴60年。

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