8月下旬、ノルウェーの山脈で300頭を超えるトナカイの死骸が見つかった。原因はたった一撃の雷。なぜこのような惨事が発生したのか? 科学者たちが解説する。
PHOTO: Haavard Kjoentvedt/Norwegian Nature Inspectorate/NTB Scanpix/REUTERS/AFLO
8月26日、ノルウェーにあるハダンゲルヴィッダ山の高原は、さながらテレビ特番のような様子だった。雷に遭った300頭を超えるトナカイの死骸が重なり、山腹のいたるところで見つかったのだ。自然による大量虐殺。ノルウェー当局によると、国家史上最悪の落雷だという。
もちろん落雷自体は珍しいものではないし、それによって動物が死んでしまうこともある。羊、牛、バイソン、ガチョウ、ゾウ、アザラシといった動物たちは、何度も落雷にあっている。ただ専門家を困惑させているのは、ノルウェーで発生した出来事の、その規模にある。
アラスカの虐殺
科学者たちは独自の理論を展開しているが、全員が、電磁気学のごく基本的な原則が関係していると考えている。
グレン・シャウがこのノルウェーのニュースを見たとき、彼は既視感を覚えたという。現在は引退している雷研究者のシャウは、遡ること1972年、アラスカ山脈の上空をヘリコプターで飛行していたときに似たような不気味な光景に出くわしたことを思い出した。
そのときは、53頭のカリブー(大型のトナカイ)の死骸が山腹で見つかった。そしてそれ以外にも、幅およそ15フィートにわたって焼けたエリアが見られた。放射状に分岐した9つの枝が広がり、外側にいくにつれて小さくなる。いわゆるリヒテンベルク図形だ。典型的な落雷の跡である。
さらに、カリブーの死骸は一貫して焼けた場所に位置していたとシャウは言う。「カリブーたちが、ちょうどこの曲がりくねった跡の上に横たわっているのが見えました」と彼は言う。「そして蹄の毛が少し焦げていた。間違いなく落雷がカリブーたちを殺したのです。疑う余地はありませんでした」