注目の裁判

「住職が悪霊にやられた」「先祖の武士が人を殺し、その邪気が…」 開運商法で訴えられた2つの寺の巧妙な手口とは?

開運商法で多額の支払いをさせられたとして提訴した原告が購入した木製の仏像。プラモデルのような組み立て式だ=8月29日、東京・霞が関の司法記者クラブ(小野田雄一撮影)
開運商法で多額の支払いをさせられたとして提訴した原告が購入した木製の仏像。プラモデルのような組み立て式だ=8月29日、東京・霞が関の司法記者クラブ(小野田雄一撮影)

 「悪霊が強すぎて祈祷した住職が倒れた。あなたのせいだ。霊を鎮めるのに1200万円必要だ」「あなたの先祖の武士が殺人をした。そのせいであなたに邪気がついている。今のままでは運気が開かない」-。

 いわゆる「開運商法」で不当に多額の金銭を支払わされたとして、1都7県に住む30~80代の男女9人が、開運商法業者や加持祈祷名目で関与したとされる2つの寺などに計約8700万円の損害賠償を求めた訴訟。訴状では、生きる苦しさの理由を悪霊など超常的な存在に求めてしまいがちな人間の弱さにつけ込み、金銭を支払わせようとする手法が生々しく明らかにされた。

 提訴は8月29日。この訴訟で原告側は被告として、(1)開運商法業者(2)業者と加持祈祷の業務提携契約を結んでいたとされる「戒徳寺」と「観音寺」(ともに岡山県高梁市)(3)両寺がそれぞれ所属する包括宗教法人である「真言宗御室派」(京都市)と「真言宗善通寺派」(香川県善通寺市)を訴えた。

 両包括宗教法人については「両寺が開運商法に加担しているのを把握しながら、住職交代などの措置を行わず、監督責任を果たさなかった」と主張している。原告側を支援している「開運商法被害弁護団」によると、開運商法に関与したとされる寺の責任を問うのは異例な上、包括宗教法人の責任を問うのも初という。

 弁護団は「数千万円を支払わされ、全財産を失った人もいる。業者は当然だが、住職という社会的信用の高さを悪用した責任は重い」とした。

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 訴状に描かれた開運商法の手口は巧妙だ。

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