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井筒屋(山形市) 「食の専門店」集まる新スタイル

 オフィスビルや店舗、住宅が密集する山形市十日町に4月、ユニークな店舗がオープンした。店名は「256」。文字通り、所在地の地番から命名した。店内に入るとレジや食品が目に入り、一見すると普通のスーパーのよう。だが個々の商品を見ると、そのユニークさが分かる。商品から産地までこだわり抜いた商品が勢ぞろいしているのだ。

 ◆こだわり商品ずらり

 コーヒー売り場には小型の焙煎機を導入、生豆を焙煎してコーヒー豆にして販売している。14種類のコーヒー豆の産地もインドネシア、タンザニア、エチオピア、ホンジュラス、グアテマラなど世界各地の豆を取り扱っており、普通のスーパーではお目にかかれない商品がずらりと並ぶ。

 お隣のワイン売り場も同様。イタリア、フランス、スペインなど主要産地の約300種類のワインが販売され、ワインセラーまで設置されている。横には、さまざまな形をしたワイングラスが600円台から5千円台まで50個以上を販売。飲み口の上部が細くなった形状のワイングラスは「中に閉じ込めた香りを楽しむ」(担当の岸川拓志常務)ためのもので、曲線のフォルムが美しいハンドメードのワイングラスも7千円台の商品を中心にそろえている。

 酒類コーナー近くには、生ハムやソーセージの「量り売り」コーナーもある。買い物客も主婦だけではなく、特別な日の食事や贈答用としてワインや日本酒などに合わせて必要な量を購入できるメリットがあるため、購入者の年齢層も若者から中高年までと、幅広いのだという。

 スーパーのようでスーパーではない-。「個別のこだわり商品など『食の専門店』が集合した食品館」(同社)というのが同店のコンセプトなのだ。

 ◆創業280年の老舗

 店舗「256」はスタイルこそ斬新だが、「井筒屋」はれっきとした老舗企業だ。創業は江戸時代中期の元文元(1736)年。さらにさかのぼれば、創業者は戦国武将、最上義光の兵糧基地に端を発した近江商人の流れをくむ。豊臣秀吉が陣を構えた肥前名護屋(佐賀県唐津市)まで運送を請け負った歴史を持つのだとか。現社長の榎森伊兵衛さん(82)は10代目にあたる。

 渡辺功治総支配人によると、同社は約1200坪の敷地で駐車場などを経営していたが、「食品の買い物場所が中心市街地にない」との地域住民らの声を受けて社長が地域貢献のためにと出店を決断。北海道から九州、沖縄まで国内はもとより、海外の産地も含め、こだわりの商品を取り寄せて販売するスタイルに落ち着いた。

 1階は食品館のほか、併設のテナントに生花店とベーカリーが入り、2階にはレストラン「プライムテーブル」。フランスでの修業経験を持つ料理人が腕をふるう同店では、1階で購入したワインなどを1千円の追加料金でセットメニューにもできるという。(森山昌秀)

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 【取材後記】今話題の「グルテンフリー」の商品から有機・無農薬・無添加の食品、果ては「1万6000円のワインに負けない」と銘打ったワインまでが並ぶ「256」。とにかく、他店では見ることができない品ぞろえで、店内を歩いていると楽しくなる。売り手と買い手、そして地域にも貢献する近江商人の「三方よし」のマインドにこだわり続ける同社の姿勢には脱帽するばかりだ。

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 【企業データ】山形市十日町2の5の6。創業は元文元年、会社設立は平成元年9月30日。資本金8千万円。事業内容は酒類、精肉、青果、鮮魚など食品館とレストラン「プライムテーブル」の経営、インターネット販売など。従業員は約30人。(電)023・622・3314。営業時間は午前10時〜午後8時(プライムテーブルは午前11時〜午後10時)。定休日は元日のみ。

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