根拠としているのは、高知県にある室津港の水深データや港の隆起量の変化量だ。
過去の経験則で一定のサイクルがあるとみられ、現地での大地震が1707(宝永4)年、1854(嘉永7)年、1946(昭和21)年と起こっていることから、次は2038年ごろになるのが目安としている。
尾池氏は「備えあれば憂いなし」と警鐘を鳴らしているのだ。
「なんとなく」地震学者に
昭和15年生まれの尾池さんは高知県育ち。38年、京都大理学部地球物理学科を卒業した後は、京大で地震学者の道を歩み、防災研究所助手、理学部教授、副学長などを経て、平成15年12月~20年9月には第24代京大総長を務めた。
25年4月からは京都造形芸術大の学長に。著書に「2038年南海トラフの巨大地震」などがある。
地震学者への道は「なんとなく選んだ」という結果だったという。「(高校の)先生は『東大へ行け』と言っていたけど、物理の実験がやりたくて…」と京大理学部へ進学した。
3回生のとき、学科選択を迫られ、「僕は人嫌い。人が少ないところを」と地球物理学科を選び、最終的に「消去法で、面白そうな中から」地震学を選択したとか。
「将来の地震予想が大事」
地道な研究生活の中で、さまざまな発見や成果があったが、それがいつしか地震の〝常識〟となっている事柄もある。
たとえば、内陸地震の震源の深さ。日本列島の内陸地震の震源は深さ10~15キロに集中しているが、それはその位置に「割れやすい花崗岩質層がある」から。自身が観測を重ねた大発見だった。