【モスクワ=遠藤良介】中央アジアのフェルガナ通信は30日までに、ウズベキスタンの独裁者、イスラム・カリモフ大統領(78)が脳出血のために「死亡した」と報じた。ウズベク当局は否定しており、情報は錯綜(さくそう)している。カリモフ氏は1991年のソ連崩壊に伴うウズベク独立以来、四半世紀にわたって独裁体制を維持してきた。権力の空白が指導部内の内紛やイスラム過激派の台頭につながり、地域情勢が流動化する恐れもある。
ウズベク政府は28日にカリモフ氏の入院を発表。29日には次女のローラ氏が、カリモフ氏は27日に脳出血を起こし、集中治療室(ICU)に収容されていると明らかにした。フェルガナ通信は「29日午後に死亡した」としている。
カリモフ氏は89年に地元の共産党トップに就き、ソ連崩壊後は形式的な大統領選で「当選」を重ねた。後継候補にはミルジヨエフ首相やアジモフ第1副首相兼財務相、イノヤトフ国家安全局長の名が挙がっており、専門家の間ではミルジヨエフ氏が最有力視されている。ただ、調整が難航した場合には、支配層内で地縁・血縁の絡む抗争が激化することも考えられる。
中央アジアでは「ウズベキスタン・イスラム運動」(IMU)などの過激派が勢力拡大を図っており、IMUはイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓ったとされる。ウズベクの政情不安を機に、この地域でイスラム過激派が力を増す可能性も指摘されている。