鹿児島県沖から沖縄地方に延びる南西諸島海溝。ここで起きる地震は謎に包まれてきたが、場所によって大地震や巨大津波の起きやすさに差があるらしいことが最近の研究で分かってきた。地下構造を解明し、原因を探る取り組みが本格化している。(草下健夫)
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弱い固着が特徴
南西諸島海溝は琉球海溝とも呼ばれ、鹿児島県沖から台湾までの長さ千キロ以上に及ぶ。フィリピン海プレート(岩板)が陸側プレートの下に沈み込む場所で、北端は南海トラフ(浅い海溝)に隣接している。
地震活動は活発だが、島が点在する地域のため観測点が限られ、正確な震源やメカニズムを把握しにくい。地震の発生間隔を調べるのに役立つ歴史記録も乏しい。本州などと比べ圧倒的に情報が少ないことがネックとなり、国は一部を除いて大地震の発生確率を不明としている。
南海トラフはプレート境界が強く固着し、マグニチュード(M)8級の大地震を繰り返す。これに対し南西諸島海溝は固着が弱く、地震を起こすひずみが蓄積しにくいとされる。過去に巨大地震が起きた証拠も見つかっていない。
一方、海溝南部付近にある沖縄県の先島諸島では、1771年に「明和の大津波」に襲われ約1万2千人が犠牲になった。津波堆積物の調査によると、こうした巨大津波は数百年間隔で繰り返してきたらしい。