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今月30日で東日本大震災から2千日、そして来月11日には5年半を迎える。身内を亡くした遺族、暮らしを台無しにされた被災者は心の痛みを癒やし、再起を図る長い道のりを歩み続けている。
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お茶をいれようと台所に立つと、子供のように後を付いてくる。いつもと様子が違う。何か言いたそうな顔をしている。
「どうかしたん?」
「いえ、別に」
ぎこちない笑みを浮かべ、言葉を濁す。
山形県酒田市の菊池真智子さん(53)は娘婿(32)を実家に招いていた。平成26年のお正月のことだ。
娘の歩さんは23年3月11日、嫁ぎ先の宮城県女川町で東日本大震災に遭い、孫の凛ちゃんとともに命を落とした。結婚して1年半。歩さんは26歳、凛ちゃんは生後6カ月だった。
お婿さんの不自然な振る舞いを見て、第六感が働いた。
「誰か好きな人でもできたん?」
黙ってうなずく。
頭の中が白くなった。
「へー、どんな人?」
顔がこわばるのを悟られないよう、努めて明るく聞いた。
震災ボランティアで知り合った女性だという。