九州電力は、鹿児島県の三反園訓知事が要請した川内原発の一時停止には応じない構えだ。同原発を停止すれば代替する火力発電所の燃料費負担で経営が圧迫されるためだ。原発を後押しする政府も、中長期のエネルギー戦略を立てづらくなる。
「原子力規制委員会のお墨付きをもらって動かしているのに、不安だけを材料にして『止めろ』と言われても困る」
九電幹部は三反園知事の要請に憤る。夏場の安定供給を優先するため川内1号機が10月6日、2号機が12月16日に定期検査に入るまで停止しない方針だ。
九電は平成28年3月期、川内原発の再稼働効果で利益が720億円押し上げられ、5年ぶりに黒字転換を果たした。2カ月の定期検査後、今年度内に運転再開できなければ押し上げ効果は650億円程度にとどまる見通し。コスト削減などの経営合理化も限界に近く、2年連続の黒字確保は厳しいとの指摘がある。
川内原発を停止してしまうと政府のエネルギー戦略も影響を受ける。昨年決定した42年度の原発比率「20〜22%」の実現には30基以上の稼働が必要とされ、停止中の原発の着実な再稼働が不可欠だ。川内1、2号機が停止すれば、全国の稼働原発は今月再稼働した四国電力伊方原発3号機(愛媛県)のみとなる。