大ヒット中の映画「シン・ゴジラ」の中で、大杉漣さん演じる「大河内清次首相」の執務室に秋田ゆかりの品々が飾られている。首相が秋田出身という設定をさりげなく見せようという庵野秀明総監督のこだわりに、地元の関係者が貸し出しなどで協力した。
川連(かわつら)漆器の盆(湯沢市)、樺細工の整理箱(仙北市)、白岩焼のつぼ(同)、秋田塗の花器(秋田市)、本荘ごてんまり(由利本荘市)…。映画では、巨大不明生物の出現に対処する大河内首相らの背後に秋田の伝統工芸品が写り込んでいる。秋田竿燈まつりの写真や太平山三吉神社(秋田市)のお札も見える。
首相が秋田出身という設定は、せりふや字幕では一切説明されない。一見しただけではどこの工芸品か分からず、画面も次々と切り替わるが、東宝の担当者は「本物を調達したのは、スクリーンの隅々にまでリアリティーを追求する庵野総監督の意向とみられる」と説明する。
秋田県地域産業振興課によると、昨年夏に製作スタッフから商工会議所を通じて協力依頼があり、県内の工芸品を紹介したという。
仙北市角館町の陶芸家、渡辺葵さん(35)が貸し出した白岩焼のつぼは、市川実日子さん演じる若手官僚「尾頭ヒロミ」の背景に写った。渡辺さんは「使っていただき、ありがたい。映画も見応えがあった」と語る。