博多女子のそこが聞きたか! なして、その地名?

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福岡市早良区の交差点では「次郎丸」の文字が並んでいる
福岡市早良区の交差点では「次郎丸」の文字が並んでいる

 ■○△丸 開墾地表す「~はる」が「~まる」に?

 太郎丸、次郎丸、三郎丸…。人の名前と思いきや、実は「丸」というのは、九州北部に多くみられる地名だ。どんな理由でそうなったのか?

 〈めんたい犬〉確かに多かね。思えば「○△丸」って地名は、そこかしこにあるっちゃんね。

 平安時代に編まれた辞書『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』にある古代の地名では、「丸」の文字が全国でただ一つ、「筑前国宗像郡津丸郷」(今の福岡県福津市)にあるんよ。

 現在の駅名では、福岡市地下鉄七隈(ななくま)線の次郎丸駅(同市早良区)に西日本鉄道甘木線の五郎丸駅(久留米市)がある。

 〈つくし〉福岡出身のラグビー日本代表、五郎丸歩(あゆむ)選手の人気も手伝って、五郎丸駅周辺には人だかりができたんよね。

 他にないか、私も地図で調べてみたよ。福岡には太郎丸と次郎丸があって、続けて三郎丸(北九州市)に四郎丸(豊前市)、五郎丸(那珂川町)…なんと十郎丸(久留米市)まであると。六郎丸と七郎丸もそれぞれ、大分県宇佐市と国東市にあるっちゃん。

 郵便番号が設定されとる全国の住所から割り出してみたら、「九郎丸」と「十郎丸」は福岡だけ。「五郎丸」は全国13カ所中、福岡、大分、熊本で計4カ所あった。

 そういえば、戦国の世を描いた今年のNHK大河ドラマ「真田(さなだ)丸」にも「丸」があるよね。城の区域を示す曲輪(くるわ)の意味で「~丸」を使い始めたみたい。もしや太郎丸とかも、お城に関係するっちゃなかと?

 〈めんたい犬〉確かに「本丸」や「二の丸」ってな具合で、「丸」は城の施設の名前に使われとる。

 ただ、それが地名の由来かとなると疑問やね。そのすべてに城があったとは考えにくかろう。

 それから真田丸のように曲輪を示すために「丸」を使い始めたのは安土桃山時代になってからといわれとる。

 「丸」が付く地名にどこか共通点がないか、よく地図を調べてみい。

 〈つくし〉印を付けよったら、福岡市や北九州市辺りが目立つね。豊前市には「小犬丸」って、かわいらしか名前もあったとよ。河川の河口近くや、盆地に多か感じがしたね。

 宮崎県の「新田原(にゅうたばる)」みたいな「原(ばる)」が付く地名も「丸」と似た場所にあったと発見したよ。「丸(まる)」と「原(ばる)」って発音は似とるけど、なんか関係があるとかいな?

 〈めんたい犬〉鋭い指摘やね。

 森林を切り開き、新たに田畑を築く。そんな開墾することを古代の日本では「はる」と言うとった。万葉集にもこんな切ない歌がある。

 『住吉(すみのえ)の 岸を田に墾(は)り 蒔(ま)きし稲(いね) さて刈るまでに 逢はぬ君かも』

 古代日本には文字はなかった。4世紀に大陸から伝わった漢字で日常会話を表現したのが、「万葉仮名」と呼ばれるものったい。

 やけん、いにしえの言葉について思いをめぐらすときは当て字の漢字よりも、音の類似性に注意した方がよいときもある。

 〈つくし〉『日本古代地名事典』の著者、吉田茂樹さんによると、開墾した土地には「原」や「丸」以外にも「開」や「治」などの漢字が使われたことが多かったみたい。

 開墾した田んぼを意味する「治田(はるた)」が基となり、「治」が「原(はる)」に変わったんだって。

 「~はる」の音がさらに「~まる」と呼ばれるようになったとかいな?

 〈めんたい犬〉九州で「原」を「はる」と読ませるのが多いのにもわけがある。かつて朝鮮半島では、集落を意味する言葉を「フル」などと読んでいた。古代、九州と半島南部は往来が盛んだった。言葉も互いに海を渡ったやろう。だから九州でも集落を「はる」と読んでいたのかもしれんね。

 〈つくし〉だとすると今度は太郎丸の「太郎」ってなんやろ?人の名前みたいだけど。

 〈めんたい犬〉確かに、地名と人名の関係は深い。平安時代中期以後には「太郎さんや二郎さんが開墾した田んぼです」って、その持ち主の名前を付けることが多かったんよ。

 それが「名田(みょうでん)」と呼ばれる仕組み。ほかにも、開墾した順番に「太郎」丸、「二郎」丸と数字を付けたっちゅう説があるとよ。

 〈つくし〉なるほど。古い地名の由来や変遷は、そこの暮らしや文化そのものを表現しとる。九州は古来、わが国でも先進地域とされ、独自の文化圏を形成してきた。だからこそ、独特の地名が今に伝わってきたと考えてもよいかもしれんよね。=終わり

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