天皇陛下は「生前退位」実現への強い思いを示された。独紙は、陛下が被災地への慰問や戦争犠牲者の慰霊を通じ、象徴天皇に「人間の顔」を付与してきたと評価。中国共産党系紙は、陛下が改憲勢力への不満から自身の「護憲の立場」を示した、と解釈した。韓国紙には、お言葉と改憲批判を結びつけて論じることは「天皇の政治関与」を禁じた日本国憲法と矛盾することになる、との冷静な指摘もあった。
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□フランクフルター・アルゲマイネ(ドイツ)
■国民の象徴に「人間の顔」
独紙フランクフルター・アルゲマイネは10日付社説で、「生前退位」の意向を示唆された天皇陛下について、日本の国と国民統合の象徴である天皇に「人間的な顔」を付与したと指摘した上で、退位が可能となれば、「国家主義に特徴付けられた戦前日本における天皇の過大な役割からの一段の離反」となり、陛下の退位意向は「転換点」との見解を示した。
社説は、陛下が生前退位に言及しなかったものの、誰もがその気持ちを理解したことについて「言わずとも伝わるのは日本ならではの高度な芸術」と強調。今回は特に制度上、陛下が「主導」できず、国民と政治家が推察する形となった背景を解説した上で、「これは深い意味で日本の現実主義である。禁じられていても、面目を保ち目的に達する道筋が常にある」ともした。