「あった~」。夏休みに入ったばかりのある日の午後、「司馬遼太郎全集」から顔を上げた女子高生が、歓声を上げた。収録された小説「覇王の家」の文中に、地元の地名に関する記述を見つけたのだという。
京都府の南端、精華町にある国立国会図書館関西館で開かれた「サイエンスプログラム夏季実習」での一コマ。府立南陽高校サイエンスリサーチ科の生徒が、同館の資料を利用して、オンライン百科事典「ウィキペディア」に新項目を追加する課題に取り組んでいた。
◆ネット社会の到来
「おもしろいことをやっているんですよ」と関西館の片山信子館長に誘われて、のぞきに出かけたのがきっかけだ。
実習の目的は、図書館を活用して、ウィキペディアに掲載される地域情報を充実させること。調べるなかで、地元の古い街道が小説に登場することを知り、原本資料に当たっていた…というわけだ。本は、見学も兼ねて学生ら自身で同館地下の書庫まで探しに行った。
こうした高校・大学生対象のガイダンスに力を入れるわけを、片山さんは「関西圏に根ざしたサービスを提供するなかで、学生の役に立つ調査研究図書館にしたい。まずは学生が図書館に足を運ぶきっかけ作りになれば」と期待する。