ゴーカー裁判で浮き彫りになったのは、ネット空間における不条理だ。
名誉毀(き)損(そん)やプライバシー侵害の訴訟対象となるのはコンテンツの「編集者」に限られている。一方で、「一次情報を商業目的で拡散しているSNSといった、一般には言論プラットホームと思われている企業は『サービス提供者』に過ぎず、違法なコンテンツが自社製でない限り責任が問われない」(スチュアート氏)。
「SNSを『編集者』ではなく『サービス提供者』とする」法理論は米通信風紀法に定められており、判例でも確立されている。
ホーガン氏に関する記事がネット空間に広がり、私生活が公になったのは、SNSの力に負うところが大きい。にもかかわらず、SNSは裁判で「転載責任」を問われなかったし、記事拡散によって稼いだ収入の返還も求められなかった。