天皇陛下は本当にご誠実なお方だ。今回のお気持ちご表明を受けて、改めてそう感じた。陛下はこれまで、象徴としての天皇の在り方を、自らの行為で示されてきた。被災地をお見舞いにいらっしゃるとき、腰をかがめ、ひざまずいてお話になる。私も80歳を超えているので分かるが、そのようなことはなかなかできるものではない。さぞおつらいでしょうと、心配になる。そうした陛下の優しいお気持ち、誠意のあるお姿は、国民にとって、大変ありがたいものだ。
しかし、私としては、お体に差し障りのない形で、陛下が国民のためにお祈りし続けてくださるだけで、天皇の象徴としての役割は十分に果たせるのではないかと思う。国民、そして国のためにお祈りすること、つまり祭祀(さいし)が象徴天皇の中心的な役割であり、災害のたびに国民の中に自ら降りていくということは、本来その姿ではない。
あえて言わせていただくならば、陛下はお優しすぎるのではないか。そこまで心配なさらなくても、国民は十分に天皇の象徴性を感じることができるはずだ。