シネマプレビュー

ナチスの五輪大会に挑む黒人選手 「栄光のランナー 1936ベルリン」

「栄光のランナー 1936ベルリン」の1場面
「栄光のランナー 1936ベルリン」の1場面

 1936年のベルリンオリンピックで、4つの金メダルを獲得した米国の黒人選手、ジェシー・オーエンスの実話をスティーブン・ホプキンス監督が映画化。

 ナチスドイツによるベルリン五輪の開催が迫り、米国内でボイコット論が強まる。しかし、オハイオ州立大の陸上選手、オーエンス(ステファン・ジェイムス)は「ヒトラー総統の鼻を明かす」ため、出場を決意。独のゲッベルス宣伝大臣らの冷たい視線を浴びながら彼は競技場に臨む。

 米国内ですら差別を受ける黒人選手が、アーリア人の優越を国策として主張するナチスドイツの五輪大会に挑む。アスリートにとって、これほどの逆境もないだろう。正面切った差別はなく、親善ムードの隙間から時折、強い敵意がオーエンスに浴びせられる。異様な緊迫感に満ちた大会シーンの描写に引き込まれる。「走っている10秒間の自由」を追い求めるオーエンスをジェイムスが好演。ナチス幹部の目の前でオーエンスに友情を示す独選手、ロング(デビッド・クロス)とのエピソードも良い。11日、全国公開。2時間14分。(耕)

 ★★★★(★5傑作 ★4見応え十分 ★3楽しめる ★2惜しい ★1がっかり)

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