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一つのミスも許されない体操個人総合最後の種目、鉄棒で、内村航平(27)は完璧な着地を決めた。内村が所属する「コナミスポーツクラブ」の本社(東京都品川区)で、不安そうに試合を見つめていた妻の千穂さん(27)に笑顔が戻った。長女の斗碧(とあ)ちゃん(3)、次女の千翠(ちあ)ちゃん(1)とともに観戦。「がんばれ、がんばれ」。逆転で五輪2連覇が決まると、涙があふれた。「ほっとした。本人の努力が実ったことが一番うれしい」。千穂さんは万感の思いを口にした。
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個人総合で金メダルを獲得したロンドン五輪から3カ月後の平成24年11月、内村は千穂さんと結婚。今では2人の娘を持つ父だ。
生活は一変した。それまでは自宅と所属先の体育館を往復する日々を送り、大きな国際大会の前は四六時中、体操のことが頭にあった。その中に、千穂さんと娘たちが加わった。「いい感じで力が抜けて、リフレッシュして練習できている」と内村は言う。五輪期間中も家族との連絡は欠かさなかった。
ただ、世界のトップに立ち続けるには家族に我慢を強いることもある。腕や肩を痛めたときは子供をだっこしたり、入浴させたりしない。脱臼を繰り返してきた左手の薬指の関節は外れやすくなっているので、子供に差し出す手は右だ。練習、試合、合宿、海外遠征…。大事な勝負とその準備に身を投じていると、なかなか遊びに連れて行く時間は取れない。