安倍晋三首相も別荘で休養中だしと、夏休み気分で見たその映画のエンドロールには、取材協力者として「枝野幸男」「小池百合子」という名前が記されていた。これは官房長官経験者の民進党の枝野幹事長と、防衛相経験者の小池東京都知事のことだろう。現在公開中の「シン・ゴジラ」の話である。
「ニッポン対ゴジラ」
映画のチラシのコピーにこう書かれているように、ゴジラ襲来という「想定外」で未曾有の危機に直面した日本政府が、どんな法律にのっとってどう対応するのかが、実に克明に描かれている。映画に登場し、首相にたびたび決断を促すこわもての女性防衛相は、小池氏をモデルの一人としているのだろう。
映画では、官邸連絡室が官邸対策室へと改組(格上げ)され、関係閣僚会議が開かれる。さらに緊急災害対策本部が設置され、住民に避難指示が出て、首相は初めての防衛出動を命じるか決断を迫られる。「人知を超えた」(登場人物)強さで街を破壊するゴジラに、政治家や官僚たちは翻弄されつつも立ち向かう。
その間、官僚による会議での閣僚に対する「メモ出し」の様子や記者会見を前に防災服を手配するエピソード、国会前デモ、そして省庁間の調整など民主主義の手続きの煩雑さがこれでもかというほど描かれている。鑑賞中、筆者自身がこれまでに目撃し、立ち会ってきた実際の官邸での場面をあれこれ連想してしまうほどリアルな描写だった。