■皇室の弥栄へ政府の責任重い
天皇陛下が、ご高齢から「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないか」と心情を語られた。
退位のご意向を、強くにじませられたものだ。陛下は82歳になられる。国民はお気持ちを、真摯(しんし)に受け止めるべきだろう。
安倍晋三首相は「ご心労に思いを致し、どのようなことができるのか、しっかり考えていかなければいけない」と述べた。
具体的にお気持ちにどう応えるのか。政府は皇位の安定的な継承の観点を含め、皇室の将来を見据えた丁寧な議論を尽くし、しかも緊急性をもって答えを出す、重い責任を負った。
≪敬愛の念を新たにする≫
天皇陛下は、即位されてから30年近く、憲法で定められた国事行為や多くの公務に精励するのはもちろん、国民のためにひたすら祈り続けてこられた。
皇后陛下とともに、戦争で亡くなった人々のことを悲しみ、その慰霊に努められるお姿は多くの人の目に焼き付けられている。大災害のたびに、人々の無事を祈り、復興を願われてきた。東日本大震災の後、ビデオを通じても苦難を分かち合うことを直接、呼びかけられた。
国民はどれほど勇気づけられてきたことだろう。
国民にあまり知られていない宮中祭祀(さいし)についても、新嘗祭(にいなめさい)をはじめとし、厳格に心を込めて執り行ってこられた。国民の安寧と幸せを祈る天皇の務めを全力をもって果たされてきたことに、国民は感謝と敬意を新たにしたい。