穏やかな、理性的な表現ながら、率直なお心の表明だった。多くの国民の共感を呼ぶようなメッセージであった。
とりわけ、「国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした」と過去形で述べたことや、摂政を置くことについて「天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません」とされたくだりには、強いご決意を感じた。
今回の事柄を、現行の皇室典範の枠の中で改定することを否定されていることも感じた。国民の側としては、よくよく考えなくてはいけない。
譲位、退位については、明治憲法のときも伊藤博文らにより論じられ、「ない方がよろしい」と決まったことも忘れてはならないだろう。日本国の安定した未来のための選択であったはずだ。こうした歴史や、過去の歩みに基づいて、国民にも政府にも冷静な判断が求められる。退位は時に政治的な意味合いを持つ。それをきちんと認識すべきで、政治的な利用は排除されなくてはいけない。