「何で結婚しないの?」「何でアルバイトなの?」-「何で」という枕詞(まくらことば)が付いたとたん、物事には理由が求められる。口にした人間は、その答えが本当は初めから存在しないなんて想像もしていない。
だが「コンビニ人間」を自称するこの主人公にかかれば、「何で」は面妖な社会のルールを映す、とびきり皮肉な鏡に様変わりする。
幼い頃から周囲をギョッとさせる女の子だった〈私〉。どうやら自分には「普通」が備わっていないらしい。一体どうすればそれを習得できるんだろう?-ある日、天啓のようにもたらされた、コンビニのアルバイトという仕事。ついに「普通」の人間に紛れるための単純明快なマニュアルを手に入れた〈私〉は、全身全霊で「コンビニ店員」を演じながら18年間を過ごす。